出会った者たち
あれから一時間ぐらいになるのだろうか。
町を探検していた波音はふと変な光景を見る。
それは部屋の窓から、白い髪の毛(?)に黒いヘアバンドをつけたような少年が長いロープを外の地面へと垂らし、
そのままリュックを持って自分が降りていく。波音は気になって少年の元に駆け寄ると「あの」と声をかけた。
ロープから降りてきたため後ろ向きになっていた少年は、いきなり声をかけられてビクッ!として体が固まり、
波音のいる後ろを恐る恐る見た。
「な、なに君?」
表情は恐る恐るで、何か用かという感じで波音を見る。
「いやあのその、なんか君が窓からロープを使って外に出てましたから…大丈夫かなって思いまして」
彼の顔つきと言葉に何処か苦笑いをしたような表情をすると最後にあははと誤魔化すかのように笑う。
「それはどうも。じゃ僕はこれで」
少年はさよならと手を振り、さっさとその場から立ち去って行った。
少年はとても急いでいたようだ。立ち去って行く姿をふむとため息なようなものを波音はつく。
しばらくして波音はミシロタウンを出てさっきの草むらの辺りの場所へと戻ってきた。
今度は違う方向に向け道路のあるほうを歩いた。
歩いているうちに大きな叫び声と呼び声に気づき、急いで声のあるほうに駆けていく。
「ルビーくん!!」
大声で“ルビー”という名を呼ぶ、白衣を着ている茶色の髪をした男を見つける。
「どうしたんですか?」と声をかける。
「実は私がグラエナ二匹に襲われていたところルビーくんという少年がやってきて、でも結局二人とも追われるハメになって。
そうしたらルビーくんが履いてた靴の製品の性能により、いきなりハイスピードで彼が走っていってグラエナたちもその後を追った。
そして彼はそのまま向こうの木が沢山ある崖のほうに飛び出してしまったんだ」
「グラエナって?」
「ああ。グラエナとはこんなんだ」
男は赤い平べったい機械を開きデータと絵を見せてくれた。
ギザギザした黒の毛と体の元はグレーで狼のような感じだった。
「私の名前はオダマキ。ポケモンの研究をしているものだ。ミシロタウンに研究所を持っていて、一応こうみえても博士なんだ」
「ポケモン?…あっ自分は神風波音と申します」
?マークをまた浮かべて唖然としそうになったが、自己紹介をするのを忘れないようにと慌てて途中から
自分の名前を名乗りその姿にオダマキは「ははは気にしなくていいよ」と気楽な感じで笑った。
それに波音は安心しニコッと微笑んだ。
「そういえばルビーくんは大丈夫だろうか」
あっと思い出したオダマキはルビーが落ちた木の崖たちのほうを心配そうにして見る。
波音も木の崖たちを見る。「自分捜してきますね」
と蝶のような綺麗な白い翼を背中から生やし、「えっ?」と顔をするオダマキを置いていって
ルビーを捜しにそのまま飛んでいく。
「…って!こうしちゃいられない」
波音のありえない行動を見てポツンと一人になったオダマキは、
またあっとした顔をして、一度ミシロタウンのほうに走って戻っていった。
一方、波音はルビーを捜しに飛んで行っているが一向に見つからない。
そのとき女の子の訛り声が聞こえてきて
「どげんことよ!」
「ん…わっ!」
声が聞こえる方向からはいきなり小さな火の玉が何個も飛んできて波音はそれをなんとか避けていく。
ゆっくり近づいて木の後ろに隠れるようにしてそっと見ると、なんと野生化した葉っぱを
下着代わりにしている変わった髪の毛(前に髪の毛二つ固定されていて他の髪の毛は後ろで縛っている)
をしている茶髪の女の子とヒヨコのような生き物が、男の子に向かって火を噴いていた。
しかも波音が先ほど出会った白い髪をした男の子だった。
男の子は鯢のような生き物を持って火を避けていた。
「だから言ってるじゃないですか。僕を助けたのはポケモンじゃなくて女の子だったんです。まるで訛り全開の野獣のような」
男の子は少し薄い灰色をした携帯のようなものを持って誰かに訴えかけるように話していた。
「ああそうか。あの子がルビーくんか」と波音はあの男の子の感じから、うんうんと思って見ていた。
さっき会ったオダマキという博士と話しているのだろうと確信をした。
ならその反対側にいる訛り声の女の子は誰なのか、そこがよくわからなかった。
物凄く怒っている様子ではあるが、今は少し疲れて立ちながら息をハァハァと荒らしているではないか。
手や足に生えた鋭い爪、葉っぱを自分の下着代わりにしているというはしたない格好、酷い訛り声。
確かにルビーが言うように訛り全開の野獣のようなと言われても仕方がない。
誰でも顰蹙を疑う姿であることは決して間違いない。
するとあの女の子の後ろから段々と近づいてきている大きな生き物が見えた。
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