それは立派なキバに同体が長くて黒い。血の気が多そうな蛇のような生き物。 キングコブラの種類の形ではないことが見ていてよくわかる。
その生き物が近づいていることに気づいていない二人に「後ろ!」と思わず木の後ろから出てきて声を上げた。
声にハッとして二人は、波音のほうを一度見ると、やって来た同体の長い生き物のほうを即座に見た。



「あんたが父ちゃんの知り合いだっていうことは信じてやるったい。でも今は」



女の子は四本足で歩くかのように地面に手をつけ、睨みつけて同体の長い生き物を見た。
同体の長い生き物は女の子に襲いかかってくると、女の子は慣れた体の動きにより
相手の尻尾を掴むことに成功をするが生き物はブンブンと女の子を振り払おうと必死で尻尾を振り回す。


「あんたたち何やってるね!見てないで手伝んかい」


女の子は生き物に振り回されながらルビーと波音のほうに顔を向けて言う。



「あの自分」



手を上げるようにして波音はどうしたらいいかと聞きたかった。
女の子は「ポケモンは!?」と大きな声で聞き返すと、波音は?マークを浮かべて
“ポケモン”という言葉に分からずにいて首を傾げてしまった。


「嫌だ」


離れた場所にいるルビーが突然、ボールのようなものから生き物たちを出す。
トイレの花子さんのような髪の毛と感じをした生き物、猫だけど三日月のようなマークを顔に浮かべた
愛らしい生き物に黒と灰色柴犬のような生き物が現れる。
鯢のような生き物も端っこに姿が見える。



「バトルなんて嫌いだね。戦わせたらポケモンが汚れてコンテストに出せなくなるよ」




フンとした表情で女の子に強く言い切ると女の子は「コンテスト?!」と嫌な顔をして口を開けた。




「フン!あんなの見た目ばかりのお気楽大会ね」




くだらないという顔つきをすると「もうよか」と言ってヒヨコのような生き物に
「ちゃも!ひのこ」と命令をする。
火の塊はバアァっと燃え広がり、生き物にダメージを与え倒すと尻尾から下りて汗をかく



「コンテストはお気楽大会なんかじゃない」



カチンときたルビーはそう批判をする。 やたらと飾り立てをするのは好きじゃない。
自然のものは自然のままが一番だと答える女の子は言った。
負けじとルビーは女の子に対して片手で自分の鼻を摘まみ、もう片方の手で相手の指をさし、



「君なんか臭うぞ。服も着ないなんて不衛生だ」


「そっちこそなんね!男のクセに髪を白く染めて」


「これは帽子だ」


ああ、あれ帽子だったのかと二人から離れた所にいる波音は納得をする。
口喧嘩をしている二人を見ているとまるで夫婦喧嘩でもしているかのように感じた。








人間って面白い。
どんな些細なことでもそれを見逃さない。
二人はツンと互いに背中を向き合っている。
お互いの主義は相容れないようだとルビーが言ったのに対して、女の子は
「そうったいね」と腰に手をつけて背中を彼に向けながら言った。


「そういえばそこのあんたは誰ったい」


見かけん顔やねと女の子は波音のほうに顔を向けると
少し不審そうにして見つめる。ルビーも彼女のほうを見て


「確かさっき僕の家の前で会った、君こそあんなところで何をやってたんだい」


波音は頭の後ろに片手を乗せてスリスリと撫でるようにして悩んだ。
なんて言ったらいいのだろう、異世界から来たなんて言ってもきっと信じてはもらえない。
二人にじっとした目で見られる視線がひどく痛い。
「自分は神風波音と言います。あの」と波音が戸惑っている様子を
見せていると女の子に「もうええったい」と話をきられた。
女の子は自分の名をサファイアと名乗った。

サファイアはルビーのほうをチラッと見て「そうだ。なら一つ賭けをするったい」とこんな話を持ちかけた。
ルビーはコンテストを制覇する、サファイアはジムを制覇する、それぞれリボン・バッジが集まったら
ここの場所に戻ってきて互いの成長ぶりを見せあうというもの。
ただし期限は八十日。ルビーはそれを少し考えた後「いいよ」と彼女の挑戦を受けた。
サファイアは納得した顔をすると今度はまた波音のほうに顔を向けて
「あんたはどうするったい」と声をかけられる。波音は正直「えっ」と思った。
自分まで巻き込まれるハメになるのかと。



「自分の目標や夢とかなかと?」



「目標と夢…どっちもあります。夢なら」
 

「じゃそれで決まり」


勝手に決められてしまったが、まあいいかと仕方なさそに思う波音。









契約はすぐ成立した。
二人と別れて道路のほうをまた一人ポツンと歩いていた。
上を見上げると夕陽が沈む空は周りにある雲たちを
桃色から紫色のグラデーションへと輝かせていた。


「夢…でもこれは」



夢の内容は二人には言ってない。
というよりこれが夢になるのかはわからない。もしかしたらこれは夢ではないかもしれない。
だけどきっといつかは叶うと信じている。






 


たとえそれが悲しい結末を招くきっかけになったとしても





 







 







 

続く