空にあるオレンジにフワフワと泳いでいる羊、草むらが駆け出す。
遥か向こうの彼方にあるランタンの贈り物。暗闇に照らし星ごとく輝く。
化学物質の影響、ネオンは様々な彩りを空という絵に飾る。建てられた沢山のビルの最上階。
届くことがない宇宙に諦めを仕掛ける。どれたけの距離が施されているんだろう。君との距離もこうなのだろうか。
硝子に映しだされるもう一人の僕を見つめる。そこへ女の影が僕を包む。


「ねえダイゴさん。いつになったら私のほうを振り向いて下さるの」
 

容姿の美しい女性、長くない茶髪に長くてマニキュアを付けた赤い爪ふっくらとした薄紅の唇がダイゴの頬を襲う。


「僕は君を愛せない」
 
その場から彼女を退けて部屋から出て行こうと足を動かす。
彼女は笑って背を向けている彼を抱きしめそのまま近くのソファに引きずり込んだ。
押し倒された状態に陥るダイゴが冷静な表情を保っていられたのは意志が断決されていたからだった。


 
「私達は時期に結婚するのよ。ちょっとぐらいおふざけがあっても良いと思わない?
今は“夫婦”じゃなくて恋人同士なんだから」
 



“恋人同士じゃなきゃ楽しめないことだってある”指先で彼の唇の撫でる。
いけないことがあるわけじゃない。今でも政略結婚だなんて決して珍しくない。
同じ身分の者が相応の身分の者と結婚するのは当たり前のこと。
世の中は全てが金、金のない人間に付いてくる者は居ない。物事は綺麗事だけでは手に入らない。
何処か自分の心を黒く染めなければならない。犬をペットとして飼っていればわかるが
犬が飼い主に懐く一番の理由が“餌をくれる”つまりそれも金の力。
金があるからこそ主人に付いてくるというのはこういうことだ、と思えないだろうか。



「もう一度言う。僕は君を」


 
「だったらもっと互いに深く知りましょうよ。例えばこういうこととか」
 


女性が体を押して詰め寄り唇と唇をギリギリに合わせ接吻が降り注ぐ。
強い視線を彼女に向ける。
 


「何よ。そんな怖い顔しないで」


 
お楽しみは此れからなんだから
ニコッと微笑んでダイゴの服に手をかけ頬と首をいじる。


「やめろと言っているのが分からないのか?」
 

押している彼女を上回って突き放す。
クスクス笑いを止めない彼女に眉間に皺がよった。不快な気持ちが込み上がってくる。
 


「これが運命なのよ今更変えることは出来ない」
 

「…運命は」
 

「貴方がどう暴こうと無駄よ」



「運命は自分で切り開くものだ。その流れを選ぶのも僕自身だけだ」


 

君には分からないだろう。“運命の王子様はいつか必ずやって来る”と思い込んでいるような君の考えは
あまりにも愚か。金で愛は買えない。
廊下に出てデボンコーポレーションを後にした僕はある場所へ行くため家に一度帰った。
其処は遠くて汚れのない島国、バカンスの天国へ旅立った。