変わらないメッセージ























あれは昔、全く見覚えのない男の子から誕生日にプレゼントを貰ったときのこと。

 
橙色の丸みのある箱にボリュームたっぷりの青いリボンで結ばれているものだった。
リボンの結び目の先を引いてみる。ぴょんと中から茶毛をした兎と子犬の中間を合わせ持つ
生き物が飛び出してきたことに驚いた。茶毛をした生き物は飛びつくとペロペロと頬を舐め甘えたそうに
尻尾を振っている。とても嬉しかった。“フィーレ”という名をつけ首に、自分の髪の毛に結んでいた赤い
リボンを外し付けてやる。生まれたばかりのフワフワした産毛を触ってみると気持ちが良く
一緒に遊んでいた。異世界を一緒に旅していたときもいつも楽しかった、ような気がする。
カーテンから射し込む陽射しが眩しい。
 

  「フィーレ・・・」
 
 


手を伸ばすかのようにして呟いた言葉は今ではもう届かないかもしれない。




久しぶりに元の服から取り出したオカリナをそっと見つめる。吹けばあの子が来てくれる
そう信じたかった。「あの人さえ居なければフィーレは…」と言葉が後に続かなくなる。
 


「ポケモンを知らないだなんて嘘だ。いや嘘だった」
 

フィーレはポケモンだ。けど名前は知らない。吐き捨てたようにして投げる本音。
ずっと昔に出逢っていたんじゃないか、ポケモンにもこの世界にも。なのに何故忘れてしまったのだろう。
頭の中も時間に追われる痛々しい苦しみは簡単に流せるものではない。
自分がもう一人居るのであれば代わってもらいたいぐらいだった。


 
「駄目だよ。そんなのは死んでるのとおんなじだ。
偽りを創るだけの意味があるの?それって生きている意味…ないよね」



境界線を引いた向こうにいる堕天使は笑みのない暗い表情にドライアイスに水をぶちまけた
ときに出る白い煙に似た瞳を真っ直ぐと向けた。顔全てに持つ感情を殺し半分は誘いだすが負けてはいけない。
言葉は正義、だけど正義であって正義なんかじゃない。





差し出された手に引きずられることなく境界線の向こうにいる黒い証は目を隠して消えていった。
気がつけばサイクリングロードとキンセツを通り過ぎ、煙突山の道に続く
ロープウェイの乗り場の横を過ぎている。何だかロープウェイの様子が可笑しいことに気づく。
人は誰も居ず肝心のロープウェイが一つもない、というより帰ってきていないというほうが正しいようだ。
草むらの横からサンドとラクライが飛び出してくる。
片方がドンメルから奪ったチーゴの実を自分のものにするため、砂と電流がぶつかり合い
それを見て横から飛んできたスバメが木の実を糸も簡単に持って行ってしまった。
二匹は恐ろしくも互いに睨みあった。落雷=ラクライ、砂=サンド(英語)、燕=スバメはそのままだなと思った。
単なる笑いにしかならないかもしれないが
揚羽蝶+ハント=アゲハント、坊っちゃま=ポッチャマの意味で名前を付けたのではないだろうか。
サファイアやルビーが持っていたアチャモとミズゴロウだって
赤ちゃん+軍鶏=アチャモ、水+ムツゴロウ=ミズゴロウだと思う。他にも由来を上げればキリがない。
ポケモンの名前を考えた人はセンスも発想力が豊富のようにも感じられる。
帰って来ないロープウェイに乗るのを諦め、近くにあった洞窟のほうへと足を進める。


異常に温かい中には炎ポケモンが沢山身を潜めていた。長くもない洞窟を直ぐ抜ける。
草むらには赤茶の尻尾が六本ある狐のポケモン=ロコンが歩いている。
砂漠も近くにあったが砂嵐が酷く近寄れない。だが思わず一歩一歩と足を踏み入れると
オレンジ色をした蟻地獄の中にでも住んでそうな獲物が
大きな頭とギザギザした口を開いたり閉じたりしていた。
ナックラーそれがこのポケモンの名前であった。作ったポロックを一つポイとあげてみる
とムシャムシャと食べ表情が読めない。顔に似合わずキラキラした目が変わることもない。
 
 

「ゲットして平気かな」


 
ポッチャマをボールから出す。水の波動を繰り出しナックラーに命中させる。
相手は地面タイプで水タイプのポッチャマの攻撃は適していたが
“水の波動”をもう一度命中させようとするとナックラーは穴を掘って攻撃から逃れる。
ナックラーが何処から攻撃をしてくるかわからない。砂の中から出てきて後ろをとられるポッチャマは
ナックラーの攻撃を受ける。捕らえようとするが上手くはいかず噛みつくの連続に体が傷ついていく。
ボールにポッチャマを戻そうとするが戻せないことにこれも困った。「特性か」と呟く。
蟻地獄をもつ相手からは逃げられない。交代さえも許せない状況に陥る。

攻めを得意とする攻撃的なポケモンにみえる。
砂嵐も酷いのにも関わらず呑気にパソコンのような機械をバックから取り出し検索をする。


「ああ出た。顎をひっくり返せれば」
 
表情画面を見て書かれている文に納得をするとポッチャマに「顎に頭突き」と命令をする。
噛みつかれたゴンと顎が経っ込みナックラーは気絶しその間にボールを投げて捕まえる。
乱暴なやり方だったためか、ポッチャマの頭にタンコブのようなものが出来ており波音は
バツの形をした絆創膏をペタッと貼ってやる。無事に成功したところで砂漠から砂まみれになって
急いで出てくる。砂を叩いて歩いていき、雪が降ってきたと思えば今度は火山灰で灰まみれとなって汚れた。
火山が近くにあるのにそれほど気温は高くはないようだ。Tシャツに短パンを着て履いている男の子が
「辺りが暑くないのは火山灰の灰が此処を覆って降ってるからだよ」と確かに涼しいし
太陽も灰色の煙のようなものに覆われて見えない。
だから野生のパッチールやエアームド達が住むには絶好調らしい。
此処でしか出現をしない珍しいポケモンなんだと男の子は自慢していた。
草むらにもギッシリと火山灰が含まれる中を歩いていく。高い鳴き声に大きな姿が速く影に映る。

わっと声を上げればふと上を見上げる。鉄の鎧を着ているかのような鳥のポケモンが誰かを乗せ
通り過ぎたあとになって此方に向かってくる。多分先ほどの男の子が言っていたエアームドのことだろう。
襲われると思ってボールからポッチャマが勝手に飛び出し、突っ込んで対抗しようとする。
エアームドは乗せている人物に「ストップ」と声をかけると止まり、突っ込んだポッチャマが
落ちそうになるとエアームドが嘴の先で受け止めた。


「ダイゴさん」


エアームドに乗っている人物がダイゴだということに気づく。
やあとダイゴはエアームドから降りて片手を半分挙げた。「エアームドに乗って飛んでいたら君を見かけた」
随分珍しいポケモンがメンバーに入ったみたいだねと嘴の先に乗っているポッチャマの頭を撫でた。
それもその筈だ。ポッチャマはシンオウ地方にしか居ない珍しいペンギンのポケモン。
こないだのことを合わせて話すと「そっか」と彼は一瞬暗い表情をするがまた元の表情に戻る。
エアームドの嘴を使って遊ぶポッチャマに視線を向ける波音。
流星の滝に行かないかと誘われれば彼と一緒にエアームドに乗り、滝のほうに飛んでいく。空は久しぶりだ。























流星の滝
宇宙と地球を行き来する流れ星が一番初めに訪れる場所。
大きな滝の中に隠れている新たな祠は流れ星の眠る居所であり川を通って
ホウエン全ての人とポケモン達に願いを贈る素敵な神秘。
星のような黄色い頭の形に緑色の短冊を三つ付け、ヒラヒラとした二つの薄っぺらい尻尾のようなものに
お腹には開眼しない眼が刻まれている。誰も見たことがない姿。
想像がしにくく普段は繭となって身を案じ深い眠りに着き我に相応しい者が来ることを祈っている。
滝を越えた上の洞窟、奥へ入っていく。奥のある狭い場所にやって来る。
大分前から掘っていたのであろうか、ダイゴは掘った場所から隕石のようなものを取り出し波音に見せた。
「流れ星…ジラーチというポケモンがこの繭の中に眠ってるんだ」ダイゴは真剣な表情をして隕石を見つめる。
繭と呼ばれた隕石、透き通っていてギザギザと星の塊のようで綺麗だけど繭には見えなかった。
宇宙からやって来たジラーチは地上に降り立つと流星の滝を創り千年眠った。
そして千年に一度七日間だけ目覚めては自分の望んでいた者の願いを叶えてくれる。
だが相性が抜群のパートナーだと見込めばジラーチはずっと傍に居てくれるという習性がある。


「ロシア語で“願い”、July=七月、七夕」


 
ジラーチの繭を波音に渡す。表情は戸惑っていないものの受け取るのに口を詰まらせる。
喉に空気が通らない。彼に動揺した様子を見せ腕を震わせて相手の目を見る。
 

「昔、出逢った女の子によく似てる」


いや性格も感じも声も全て同じ。相手の瞳孔を逃さないよう顔を近づけるようにして細め波音の手を取る。
自分の心境を透かす。誘われて目を見開き脳波にあらゆる映像が浮かび上がり目の前が真っ白になる。
手を伸ばし割れた硝子を飛び散らせ粉々にしていき誰かが此方を必死に走ってくる。
伸ばそうとした手がこれ以上伸びない。貴方は正体を知らない。だから必死になって走ってくるんだ。
 





『クルナ クルナ リョウイキにハイッテハナラナイ タカミにオチイルマエにオチイルマエに....』



 
境界線という水槽から飛び出す。黒く薄い膜に光る物体は目を尖らせ骨だらけの本体に肩翼を身につけ
魂と合体し口の中に含ませる。強いエネルギーを放ちあの世とこの世を行き来する力。追跡することだ。
現実に引き戻され、二人の場が映しだされる。













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