コンテストデビュー
シダケタウンに昨日到着したばかりの波音は外に出て
カラサリスと一緒に新鮮で綺麗な空気を吸いに散歩をしていた。
とはいってもカラサリスは歩くことが出来ないからいつものように持ち歩いているわけだが
今日はそろそろそれをしなくても良い日が来そうだった。
カラサリスの体がいきなりブルブルと震え始め、光ってドンドン変化をしていることに気づき
波音の手から離れて宙に浮き蝶のような形をしてくると光が消えて姿がハッキリする。
バサッバサッと翼を動かし大きなアゲハ蝶のようなポケモンになり「アア」と鳴き声をする。
進化をしたことに彼女は喜んだ。おめでとうとアゲハントの頭を優しく撫でてやるとアゲハントは
それに喜んで彼女の頭の上に乗っかってきた。昨日ジョーイさんが言っていた通りであった。
そのままシダケの町を歩いていると彼女は緑色の髪をした少年と出会った。
少年はカメレオンに似たポケモンにラルトス、薔薇のようなポケモンを連れていた。
少年は「ミツル」という名前であった。こないだまでは両親のいるトウカシティに住んでいたが
体が弱いため空気の良い親戚のいるシダケタウンのほうに移ってきたという。
トウカから来る際、ポケモンを捕まえられたのは「ルビーくんが協力してくれて」とミツルは
小さな笑みを浮かべた。ルビーくんならと波音は手を上げるようにして“知り合いです”
のようなことを言うとミツルは驚いて「ルビーくん、僕とカクレオンを捕まえた後いきなり地震があって
地面が崩れて川に落ちてそのまま行方不明に」と顔を俯かせた。
大人の人を呼ぼうとしたがラルトス(=RURU)がそれを止めてきた。
けれどラルトスの赤い角の部分には人の気持をキャッチする力があるといわれ、それによりルビーが
生きていることがわかったため大人たちには連絡をいれなかったという。
そのことに波音は感心をもった。
もしかしたら此処にはコンテスト会場もあるし、いつかはルビーがやってくるだろうとミツルは
思っていたが、明日から此処を旅立ってしまうためルビーに会えないと少しガッカリしていた。
「そういえばコンテストってなんですか?ルビーくんが好きのようですけど」
「ああコンテストっていうのは此処最近ホウエンのほうまでは見た目や
技だけを競い合うものでこないだから制限時間制のバトルも混入されたんです」
「へえなんだか面白そう。やってみようかな」
コンテスト会場のほうをふと見る。
「波音さんならきっと大丈夫だと思います。それに此処ならパスも発行することも出来ますから」
いつでも受けられますよとミツルはニコッとして波音に
「これポロックケースです。ポケモンのコンディションを上げることが
出来るものでコンテストにも有利だから」と彼女にポロックケースを渡す。
「ありがとう。ポロックって?」
「ポロックは木の実から作るポケモンが喜ぶお菓子のことです。
コンテスト会場に機械があるからそこでいっぱい作ってケースに入れれば
ポケモンにいつでもあげることが出来ますよ」
知らないことばかりに波音は年下になった気分だった。
ミツルと別れた後草むらの方に行きアゲハントと特訓をしようとしていた。
しかし肝心なことにアゲハントになってから技がわからない。というより、体当たり、糸を吐く以外
何も知らなかった。それは他のポケモンを持っても同じことであろう”仕方なくポケモンセンターにある
パソコンで調べると“毒針・吸いとる・風起こし・痺れ粉・朝の陽射し・メガドレイン・メロメロ・銀色の風”等だが
全て覚えているとは限らない。
試しに色々と行ってみてほとんどの技を覚えていたが特にそこには例外があった。
それは野生のロゼリア(先ほどミツルが持っていた薔薇のような生き物と同じ)と戦っていたときである。
風起こしで一回攻撃すれば充分であったが、違うロゼリアと戦ったとき敢えて
相手に先手を取られ毒針がアゲハントに命中をしようとした際、アゲハントの体が光りそれを受け付けなかった。
そのままロゼリアを不思議な光で包んだように浮かび上げ投げ飛ばすかのように強い念力を放った。
凄い凄いとアゲハントに駆け寄り抱きしめた。
他にも体から複数の光の塊を放ったり、体を使って燕のような速い動きで相手を攻撃したりと普通では有り得ないことが起きた。
ポケモンセンターに戻って休む際にパソコンで調べた。
「神秘の護り、サイコキネシス、目覚めるパワー、燕返しか。
コンテストは一次審査二次審査、一次審査は見た目と技を競う。
どれだけ良いものを見せることが出来るかが」
パソコンのほうに置いている目線を頭の上に乗っているアゲハントのほうに目線を移す。
目が合うと《大丈夫だよ》と言ってくれた、ような気がした。
コンテスト当日
前日に受け付けのお姉さんにパスを発行してもらい予約をした。
以前はかっこよさ・美しさ・可愛さ・賢さ・逞しさと部門が別れていたが現在は統一しているという。
初めてのコンテストなため緊張しながらも控室に向かい、テレビに会場のドームが映っていて
間もなくコンテストが開催される。司会をしている女の人と審査員が三人であるとのこと。
得点は五十点満点でせいぜい三十点取れれば良いところだろうと隣に居た
ベテラントレーナーたちが言っていた。
全部で合わせて四十人者の人が参加している。波音のNo.は幸運か不幸かは分からないがラッキーセブン
であった。始めのトレーナーからどれも凄いものを見せつけられた。
そして波音はふと気づいた。
全員必ずモンスターボールから最初にポケモンを出してアピールさせているではないか。
「モンスターボールで捕まえてない」
彼女はあーと唖然としたように言葉を流す。どうしようとは思いつつも既に時は遅い。
何故なら順番がやってきてしまったからだった。このまま不幸なラッキーセブンに陥ってしまうのだろうか
“仕方ない!このままでやろう”と立ち上がり、ドームのほうへと向かおうとしたとき
ポケットから何かがコロコロと落ちた。
赤と白の半々の丸い形をしたボール、モンスターボールであった。
何故ポケットにと思いつつ彼女は昨日のポケモンセンターに居たときのことを思い出した。
ジョーイさんにポケモンを預けるとき「あれ貴方ポケモンをモンスターボールに入れていないの」と聞かれた
ときのこと。波音は首を横に振った。回復が終わりアゲハントが返されたとき
「貴方のポケモンは元気になりましたよ。それからポケモンはこれに入れてあげることも必要よ」とジョーイ
さんはウインクをして六つのモンスターボールを波音に渡した。けれど今日まで使うことはなかった。
アゲハントをモンスターボールの中に入れて急いでドームへ向かうとNo.を呼び出され彼女は登場した。
沢山の人が観客席に居ることに見回した。そしてアゲハントをボールから出し、朝の陽射しから
目覚めるパワーを放つとそれをサイコキネシスで操りアゲハントの周りをクルクルと回って
体もクルクル回らせる。銀色の風を使い竜巻のようになる。
更に痺れ粉を混じらせれば金色の竜巻となり観客を大きく騒がせキラキラ光る。
大成功に終わった一次審査の得点は四十点を越えていた。
結果一次審査は通った。
二次審査では制限時間が五分以内でどれだけモニターに映し出されている相手の体力が
減らせるかを競い合うがそこでも波音は大きな活躍を見せ、決勝で勝ち優勝した。
シダケリボンが贈られ、偶然居たマリとダイに取材を受けさせられた。
“まあ魔導対決とかしてたぐらいだから”と思いつつも質問に答えていき、取材が終わると
シダケタウンを出てカイナシティに向かうためキンセツシティのほうを通っていく。
途中で自転車屋のオーナーに自転車を貸して貰えることとなり、ダート自転車を貸して貰えた。
もう一つのマッハ自転車はいつでも好きなときに貸してあげるよとのことであった。
サイクリングロードを駆け抜ける。風が当たってとても気持ちが良く天気も良い。
カイナシティが直ぐそこまで見えてきた。海から吹く潮風はとてもしょっぱく明るかった。
急ぐかのようにして波音はサイクリングロードから抜けると自転車を魔法で
異次元空間に送り、そのまま走って行った。
続く