襲いかかる影























「ちゃも!どらら!」




ヒヨコのポケモンと鋼の亀のポケモンはサファイアの指示に従って
三匹のポケモンたちに向かっていき攻撃を開始する。
社長が危ないと思い波音は社長を後ろにし、いつ襲いかかってきてもいいかのように身がまえた。
三匹のポケモンのうち一匹の河童のような姿をしたポケモンが
二匹に相手を任せ、クルリとジャンプして社長と波音に襲いかかってきた。
彼女は「カラサリス、糸を吐く」と命令した。糸に絡まって河童のポケモンは身動きを失い急降下し倒れる。
ジタバタと暴れ糸を切ろうとしているうちに社長を連れて逃げ出す。
サファイアにも声をかけたが「そん人と一緒に先行ってるけん」とまだ戦闘途中であった。
やむを得なく逃げることしか出来なかった。遠くのほう(カナシダトンネル方面)に走っていく。
ハァハァと息を荒らす二人は一度カナシダトンネルの前でその場に休む。



「お怪我はないですね」


 
社長の体に何処も怪我がないことを確認する。
ポワルンのほうも無事なのを確認するとほっと手で胸を撫で下ろして安心をした。
草むらの辺りには野生のポケモンたちが沢山いることに気づく。
特にその中で多かったのはゴニョニョといった垂れ耳兎の小型バージョンのポケモンであった。
波音は興味津々にカラサリスをその場に置きひょいとゴニョニョを持ち上げるとハハとじゃれ合っていた。
“なんていうお嬢ちゃんなんだ。野生のポケモンにじかで触るだなんて”しかもじゃれ合っていると
ツワブキ社長は驚いた。波音はゴニョニョに額を当て目を閉じた。


「お嬢ちゃん何やってるんだい」
 

「お話ししてるんです」


この子と、と波音はゴニョニョに「ねー」と言った。
そのことにツワブキ社長は理解が全く出来なかった。
ポケモンと話してると言われてもそれを信じる人なんて絶対居ない。
当ててた額を離すと波音は困ったようにトンネルのほうを見た。
「今度はどうしたんだい」と聞く社長に波音は
「この子、親とはぐれちゃったみたいなんです」と自分の顎に片手の指先を当てる。


確かにゴニョニョはキョロキョロするかのように辺りを見ている。
波音は置いていたカラサリスも持って「あそこか」とトンネルのほうへと向かって歩き入ってしまった。
「ちょっとお嬢ちゃん」とツワブキ社長は彼女の後を追いかけた。
トンネルの中は思ったよりも暗くはなく、すんなりと歩いた。しかし途中で大きな岩が邪魔となり
そこから先に進むことは出来なかった。兎の耳が垂れたような表情をして波音はゴニョニョを見た。
その時大きな爆発音のような声がトンネル全体に聞こえ二人の耳を痛くした。
それに反発し合うようにゴニョニョも大きな声で鳴き始めると音は段々と大きくなり震動もする。
なんだなんだと二人は震動と共に上から細かな岩の欠片たちが落ちてくるのを避け
塞がっていた岩がバーン!と一気に崩れるとそこには
紫色をした嫌な目つきをした怪物が立っているではないか。
 

「バ、バクオングだ」
 

後退るかのように言葉を吐く社長に対し、波音が持っていたゴニョニョは愛らしい鳴き声をしながら
彼女はバクオングに近づいてゴニョニョを相手に渡した。

睨むかのようにしてバクオングは彼女を見たが、しばらくして微笑んだような表情を浮かべ
ゴニョニョを手で持ち頬を擦り寄せていた。ゴニョニョも同じように頬を擦り寄せていた。
それを見てまたホッと安心をする波音は「今のうちに行きましょう」とツワブキ社長とトンネルを出て
元の場所へ戻って行った。戻ると「おーい大丈夫だったとか?」とサファイアが駆けつけてやってくる。
よく此処がわかったなと思ったら“ポワルンが来てくれたおかげで助かった”と彼女は言っていた。
ポワルンは彼女の横からスッと現れツワブキ社長の元へと着く。
社長はポワルンを撫でて「お嬢ちゃん二人に頼みがある」と二人を見た。まず自分の懐から手紙を
サファイアに渡す。ムロタウンにダイゴという男が居るから届けて欲しいとのこと。
一方波音のほうはデボンの荷物(特別起動部品)をカイナシティの造船所にクスノキ館長
という人が居るから届けて欲しいと社長が言うと二人はそれを受け入れた。
その後、波音はカナシダトンネルのほうを抜けたシダケタウンのほうへ向かい
サファイアと社長は一緒にカナズミのほうへ戻っていった。














続く