そういうことなら自分も同じである。
両親は居ないが、こうみえても他世界の姫君。
もう幼なじみの婚約者だって居る。別にそれだけに関しては波音はなんとも思ってはいない。
此方の世界とは流れている時間は違うけど、実はというと結婚式が間近なのであった。
結婚式前には当然やらなければならない使命がある。
それを考えていた波音は首を思いきり横に振り何かから逃げるようにしてその場を立ち去った。
誰かに言って本当は助けてもらいたいぐらいだった。
だけどそれもそれでしてはいけない。どっちの道に行っても痛い目に会うだけだから。
痛い目に合うぐらいならいっそのこと我慢をして…。



次の日
 

 
いつもの元気にしてベッドから起き上がり背伸びをする。
横を見て気がつくと隣に眠っていたケムッソはカラサリスという白い繭のような
形をして進化を遂げていた。虫ポケモンって本当に成長が早いのだとある意味感心をした。
昨日あれからポケモンスクールという学校で習ってきたかいがあったと思う。

ニッコリと微笑んで「カラサリスおはよう」
とカラサリスをケムッソのときのように持ち上げ、挨拶をする。
カラサリスは目をパチクリとする。そんな様子に「えへへ、そっか」と彼女は言った。
時計のほうをふと見ると午前の十時過ぎになっていた。
服を此処の世界用にチェンジをし、ヒラヒラした服にフリルがついた
長くも短くもないスカートの下にはスパッツを履いている。
子供っぽいから、こういうふうな服を着ると余計に幼くみえてしまうが彼女は気にしない。
年齢としては十二才ぐらいだろうか。帽子は被らず、ピンクのスカーフのようなものを首に巻いて
マフラーのようになる。ご飯を食べいつものように元気良くポケモンセンターを後にして
カラサリスを持って外に出る。噴水の目の前の横を歩いていたら小さな変わった形をしたポケモンが
浮かんでやって来ることに気づき、ポケモンはいきよいよくドンとこちらにぶつかってきた。

ぶつかってきたポケモンの頭を撫でて「大丈夫ですか?」と微笑んでみると
ポケモンは元気良く嬉しそうにして波音を見てじゃれ合っていた。
そこに昨日ベンツに乗った白髪のおじさんが「すいません。ポワルンが何か」と帽子を被って駆け寄ってきた。
その後ろからテレビ局らしき女の人と男の人がマイクとカメラを持って
「ツワブキ社長待ってください」と社長の後を追いかけてくる。

 
「大丈夫ですよ。ちょっとはしゃぎ過ぎちゃっただけですから」


ねーとじゃれ合っているポワルンに言うと、ポワルンはくすぐるかのように波音の頬に擦りよってきた。
やっと追いついた女の人と男の人はやっぱりテレビ局の人だった。
ツワブキ社長に取材をしていたらしく、ペットととのことでポワルンのことも
紹介していたのだが途中でポワルンが何処かへと行ってしまったため捜してたという。

 
「君がそこに居てくれてよかったよ」
 

感謝するとツワブキ社長は目を細めた。
 
 
「いえそんな…あははは」
 
  
ポワルンが頬に擦りついてくるため彼女はくすぐったくてしょうがなく
ツワブキ社長とまともに話せない。その間にカメラが回っていてジーッと波音を映していた。



「にしてもあの子何者なのかしら」



女の人はふと呟いて自分の顎に片手の指先を当てる。
隣にいるカメラを回している男の人は「そうですよね。あんな子見かけたことないし、初めて会った筈なのに
あれだけポワルンに懐かれているだなんて」と疑問と考えが浮かぶ。
 

「普通じゃないわあの子」

 
よしあの子も取材するわよと女の人は彼女のほうに歩み寄っていく。

 
「やれやれマリさんも物好きだな」
 

仕方なさそうにして取材をしているマリと社長と波音を見る。
取材を受けている途中にポワルンが居なくなっていることに気づく。
全員であれあれっと辺りを見回し捜したが居ない。
手分けしても捜すがそれでも見当たらなかった。


また何処に行ってしまったんだろうと社長は心配をしていた。そこへサファイアが偶然その辺りを
歩いていると波音は彼女に気づいて声をかけた。彼女はこないだの格好と違って
とても女の子らしい格好へと変化をしていた。赤い服に白の短いスカートにスパッツを
着て、頭には赤いバンダナをしていてモンスターボールマークが付いている。

靴下は黒で普通のスニーカーを履いている。彼女にピッタリだと思った。
彼女に事情を説明すると「うん!よかよ」とすんなりと心良くオッケーしてくれた。
噴水の近くに来るとサファイアはクンクンと動物のように臭いを嗅ぎ始めた。
「何をやってるんですか?」と首を傾げて聞くとサファイアは「臭いがこの辺に集中しとる」と
靴と靴下を脱いで噴水の出ているペリカンのような形をした鉄の塊(像)の口を無理矢理開き始めた。
えっと周りは驚いた。次第に人も此処へと集まってきて、ザワザワとする声が徐々に上がっていく。
波音も同じく、近くにカラサリスを置いて像の口をこじ開けるサファイアの作業を手伝う。


なんとか像の口を開いて中をこじ開けるようにしてポワルンを捜す彼女。
「もういいよお嬢ちゃん達」とツワブキ社長は心配そうにして彼女に言った。
水道局に電話をしたらしいがまだ来ない。
そんなの待ってたら手遅れになると彼女は必死で捜しながらも社長のほうを見て言う。
しかし社長は「いや君たちには悪いかと」と申し訳なさそうにしていたがそういう問題ではない。
困ったときにこそ他人の力が必要になってくるのであって、水道局の人が来ないから
“君危ないからやめなさい”というのは非常に馬鹿気ている。
 


「ツワブキ社長様。貴方は一体命を何だと思ってるんですか?
たかがペットだって、ずっと自分が大事にしているものなのであれば
どんな状況においたってそんな言葉は出ない筈です。
死ぬかもしれないのに、目の前で死にかけている者を助けることがいけないことなんですか!?
関係のない人達に助けられてもらうのがそんなに申し訳ないことなんですか!?
何もしないまま見て見ぬフリを貴方はするんですか!!そんなの絶対違う」

 


ツワブキ社長のほうを向いて相手に訴えるようにして言うと目を反らし
ポワルンを救出することに集中をし行動する。
ポワルンはまだ見つからない。

サファイアがここの辺りにもしかしたらいるかもとトントンと下の細い鉄のパイプ部分を叩いた。
「わかった。どらら」と鉄の甲羅をもった亀に似たようなポケモンが飛び出すと美味しそうに
パイプの部分をガリガリとかじり始めた。ある程度食べ終わると彼女がパイプの部分に手を巻きつけ
波音も手を巻きつけて一斉の世と細くなったパイプの部分を思いきり折る。
するとパイプは簡単に折れて水が強力な噴射のように溢れだす。


二人はずぶ濡れながらもポワルンの救出に成功をし無事を示すように
ポワルンをサファイアと一緒に挙げる。社長は感動したかのように涙を浮かべポワルンが返される。

 

「いや本当にありがとう。お嬢ちゃんたち」
 


そして済まなかったと深く頭を下げて波音のほうを向いた。
波音は「自分よりポワルンに謝ってください。それにわかってくれれば」
ポワルンも無事でしたからといつもの笑みを向けて社長に笑顔で言った。
そんな光景を見ていたマリたち(もう一人はダイという男の人)は静まった噴水にある排水口をふと見た。




マリは排水口の檻が切られていることに気づき不審に思った。
 きっとポワルンが引きずり込まれたのはこれが切られていたからであって、そのせいで引きずり込まれ 
パイプの中に閉じ込められた。しかし何処の公園にある噴水に行っても檻は普通切れていない筈。 
つまり誰かの仕業であることがわかる。そんなことを推理しているうちに突然噴水の周りにある水溜まり場から
ギロッと複数の鋭い目が光ることにサファイアは「何かいる」と気付いた。
といきなり水溜まり場から三びきのポケモンが飛び出してきた。
鮫にピラニアに河童のようなポケモンたちがその場にいる全員に襲いかかってくる。
波音は直ぐ様近くに置いてあったカラサリスを持って抱きしめた。その時太陽が直面に射し込んでくる。




























続く