カラクリだらけの秘密基地





















木の上に浮かぶツリーハウス

 
相対する空と雲
 
見えない者が時々形として動いては周りの背景に溶け込む。

草の海の上に風の子が駆けていく。
 

 
まだ生まれていない明日のために。




 
「夢は希望を与え、時には欲望をも生みだしかねない。」

 
真実の鏡が指を差す先に映しだされる異世界。全てに時間と空間が流れるからこそ生き物は姿を損なわず
ありのままの姿を維持出来る。時間は月、空間は太陽の魔力を持つ。
二つの魔力を合わせ持つことは決して容易ではない。“星の力”と呼ばれた時空を司る神…
本来は形なき者が段々と人の願いによりその姿を現すことに成功した。願いは夢へ、
希望と欲望という二つの夢の誕生。それが光のカオスソルジャーと闇のカオスソルジャー。


 
「とてつもない時空の塊、生を生みだし死期に近い者(死んだ者)の魂を回収し
そのうえ夢へと進化まで遂げた二匹。だが」

 

暗闇にかかった男は靨を顔に作った。怪しい笑みを浮かべながら時空がこの手に入る時までを待つ。
鏡を照らす鈍い明かりは刻々と侵食していった。




















「ねえ本当にここら辺にあるの?」


暑くてやんなっちゃうわと草を掻き分けては大きな鋏をジョギンジョギンと切っていく。
頭に巻いているバンダナが汗になじんで炎夏に消える。少し離れた所から「全くだぜ」
黒いサングラスをかけた怪しいアフロ。隣に居た波音が木の枝に両手をかけてブラブラとぶら下がり
「暴走族ですか?」と突っ込めば「うるせえ。お前だって猿みてえだぞ」と言葉を刺した。
休憩にしようか、汗で乾いたバンダナを手にシロナが鋏を片手に持ってやって来る。
キクノが淹れた冷たいお茶に入っていた氷が太陽の熱と光により溶けて眩しく見えた。
ゴヨウとリョウが先の草むらから帰って来れば冷たいお茶を受け取る。
長い草むらが生えていた大地は既に痩せた大地と化していた。
野生のポケモンが慌てたようにして引越しのためにあちらこちらで駆け回っている。
「なんか可哀想なことをしてる気がする」一種の自然破壊だし
兎の耳が垂れたような表情をして考えればシロナは可哀想に思う。
 


「秘密基地もまだ見つからないし困ったわね」

 

ホウエンに来たのはもう三年ぶり。チャンピオンの仕事も忙しくてなかなか此処へと来る時間はなかった。
それは四天王も同じで挑戦者が挑んで来たら敗北するまでの間各部屋で待ち続けなければならない。
ジムバッジを全て集め、ポケモンリーグに参戦し、四天王に勝ち
そこで初めてチャンピオンへの挑戦権が与えられる。上には上がいるということを思い知らせるために。
何処の地方も同じ条件で開催するポケモンリーグ。
シロナは優しい微笑みを浮かべ波音のポッチャマの頭を撫でている。「よく育てられてるわね」
意味深な言葉を口にすれば彼女の他のポケモン達を見回した。


「ジムバッジは集めてないの?」手を離し立ち上がった目線が続き、波音は首を横に振った。
そういえばポッチャマは何処で手に入れたのと聞かれれば「カイナシティにある太陽の楽園で」
卵だったものが元気に還り、今では立派に成長を遂げた雛。そろそろ新たな姿を手にしても良い頃の筈なのに
何故かポッチャマの体からはエネルギーが光となって満ち溢れることがない。
膝の上に乗る彼を波音は抱き上げて話しかけるかのようにして傾げた。首を絞められた感覚が戸惑いに変わる。
彼は思わず身震いをする。愛らしい目を浮かべるが果たしてそれがいつまで持つものか…。
今のことはなかったことにしよう、話を切り替えあちらこちらへ飛んでは返ってくる。
言葉のキャッチボールに弾けるリズム、元気な陽だまりに強い蜃気楼。私は妖精。
普段は見えないけど夢を与える小さな希望なのよ。
魔法の言葉【心を繋ごう!いつまでも笑みを浮かべてられるように】諦めを知らない輝きを放つ。
弱気になっても前に進むことを恐れない、閉ざされない、変わらない。
日々重ねてきたものが崩れてしまわないためにと。希望は汚れてはいけない。いつでも明るく元気に、活発で‥
しかし子供のままで成長が止す。痛みと引き換えに手に入れた髪や体や言葉に感情、それに気持ちも。動物化する。
最初は姿も形もなかったのに、ただ本能だけで様々な世界をさ迷い時空が流れた。生命の生きる地へ。
噴水の丘の上に虹が掛かる。鍵穴の粒のように小さな小さな理がすぐ玩具みたいに壊れてしまう。
体を濡らす雨が降った。

「やだ。雨ね」
 
ひとまず雨宿りをしましょ、近くの大きな木の下に移動をする。草木の感覚ではなかった。
リョウが気づいてその上をジャンプをするが、どういうわけか次にジャンプをした瞬間
偽物の木を貫いてびょーんと飛び跳ねて行ってしまった。叫び声が聞こえた。
バイバイという視線で送った後、シロナが下にしゃがみ「これ草じゃないわね」
ゴヨウも続けて草の上を触る。クッションみたいにフカフカ。まるでトランポリン。


「壊してみますか。アゲハント!秘密の力」

 
ボールから放たれたアゲハントが一気に偽草達を秘密の力により道が開く。
真っ暗闇の大きな穴、リョウ以外(現在居ないため)の全員が『誰が入る?』顔を見合わせる。





「ジャンケンで決めようぜ」


「えートランプあるから婆抜きとかにしようよ」
 

「あらそれは私に対する嫌味?」
 

キクノは冗談ながらもシロナにおほはと笑った。この人は絶対敵に回すまい。



「じゃあ間とって人生ゲームで」
 

「いいからさっさと決めんか!!」





双六のように広げてあった人生ゲームをテーブルみたいに全員事ひっくり返す。
「これだから時間が掛かって仕方がない」ゴヨウは眼鏡をスチャっと押しはめる。
ジャンケンで決め一人ずつ入って行きオーバーが一番先頭。