集まった者達





















 
「釣れない…」

 
ヒワマキシティに向かう途中、偶然にも釣り人のおじさんから貰った
『良い釣竿』を試しに川の畔に餌を付け垂らし、獲物が掛かる時を待ち続ける。
しかし待つこと二時間、一向に餌に噛り付く獲物は掛かって来ない。コイキングさえも釣れない。
仕方なくポイントを変えて長い草むらの中をスタスタ歩いていく。
丁度その頃には昼時になり、幸いポイントを変えて沢山釣れた、新鮮でピチピチと跳ねた
コイキングが地面の上で力なく跳ねている。ポケモン達は腹を空かせて《ご飯まだ?》と全員で首を傾げていた。
波音はコイキングのほうを向いて、「食べれるかな、あれ」と力なく跳ねた魚を見る。
ポケモン達はそれにギョッとし、互いの顔を向き合った。当分正面(まとも)な食事は出来ないだろうと
一筋の汗を流していた。昼が終わり日が沈みかけている頃、ヒワマキシティへの道程は長く一日で町へ着くには
かなり厳しかった。今夜は野宿になって、近くに生えていたモモン、オボン、ヒメリの実を材料に
食事を作り始め、ポケモン達にも手伝わせた。進化を遂げたビブラーバ(元ナックラー)は
最初のときの姿とは打って変わり、原型に似てもつかない形と色をしていてトンボのようだった。
ビブラーバは♂、アゲハントに好意を持つのに対してアゲハントも同じ気持ちであった。
一つのカップルが誕生する。



ポッチャマが「ポチャポチャッ!」と二人の前に万歳をする形でぴょんぴょんと横を足だけでステップする。
そんな三人の姿を見て微笑み、前の焚火に当たりながら腕の中にあるジラーチの繭を撫でては夜空を見上げる。
だが星は見ることは敵わず、それどころか空一面が雲に全て覆われていた。
ジラーチが目覚めるためには彗星が必要だった。千年に一度七日間だけ対面し逢えるのは
ジラーチだけではない。今日は彗星の現れる日、の筈がこのような天気になってしまい
兎の耳が垂れたような表情を浮かべた。“魔法を使えば”とも思ったがそれでは意味がない。
眠り続けながらも既に何千年もの時を越え、目を覚まし、長い年月を待ち続けたジラーチに申し訳ない。
例えこのまま目覚めることがないとしても、“自分にはこの子達がいる”そう思っているから。
晴れることのない夜空に顔を呆然と眺め続け風が吹く。風の悪戯により、先ほどまで明るさを踊った赤い塊は
一瞬にして消えてしまった。明るさを放とうとし立った。地面にカランコロン、音が聞こえ何か落としたようだ。
落とした物を拾う。オカリナだった。ずっと大事にしてきた物、だけどずっと吹いていない物でもあった。
不思議で久しぶりになんだか吹いてみたくなった。近くの丘の上に登り、大きな岩の上に座る。
長いリバーに森が遠くのほうまで続いているが町が僅かながら少し形として出ており
小さな光が淡く薄く照らす。ヒマワキシティはもうすぐだ。












音色は漂う。希望が満ちて全てが眩しくなるような未来を映しだす。
悪戯な風はすっかり和らぎ、スウッと髪や体を通り抜けて全身に宿る。あの頃と全てが一致する。




蒼い草原に花咲く季節

 

丘に聞こえる遠い記憶

 





虹のアーチと蝶の群れ

 
みんな私のお気に入り

 





聞こえますか?貴方は今何処に居るんですか?…まだ思い出せないんです。
自分が貴方の近くにいてもし貴方を苦しませているのだとしたら、もう少し時間をください。
方法はまだあると思うんです。もう一度だけ、救うことが出来なかったあの子の代わりとは言いません。
賭けてみたいんです。“記憶を取り戻したい”それが自分の願いだから。
 











 

 


 



続く